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@飛ぶ鳥を落とす勢いのノンアルコール飲料
それはビールから始まった。1990年代中盤以降、日本のビールメーカー各社から、より酒税の安い飲料として、発泡酒が発売された。価格が消費者に受け入れられてビールの売り上げが減少する一方、発泡酒の売り上げが2000年になって飛躍的に伸びた事から、税当局は酒税の減少を危惧し、2003年に税改正を行い、発泡酒の税額を引き上げた。そこでビールメーカーは第3のビールというジャンルを開発し、ビールでも発泡酒でもない、“ビール風味のアルコール飲料”を導入した。最初に出たのがサッポロビールのドラフトワン、続いてサントリーの麦風、キリンののどごし(生)、アサヒのアサヒ新生であった。この様に日本のビール市場は、販売を増やそうと低価格商品を開発し続けるビールメーカーと税務当局のいたちごっこを繰り返してきている。一方、飲酒運転に対する法規制強化、家庭志向の強まりから家飲みの増加、カロリーを気にするダイエット志向などから、ビールにおいては早くからノンアルコールの開発が進んでいた。日本で本格的なノンアルコールビール、正確に表現するなら、ピールテイスト飲料(ビールではないので)が導入されたのは2009年のキリンフリーからである。その後、アサヒ、サントリー、サッポロが次々に新商品を投入した。これらの商品の特徴はアルコール度数がゼロ、という事である。それまでは、低アルコールビールと称した分野の商品はあったが、全くゼロというのは存在しなかった。海外のビールでも、表示上はアルコールフリーと称しているビールは以前からあり、私もドイツにすんでいた頃は、自動車を運転するとき等には飲んでいた。ローエンブラウというドイツのメーカーのアルコールフリービールは、殆どビール風味でおいしかったのを記憶している。ただそれでも0.1%程度はアルコールが含まれていた。さて、このビール風味ゼロアルコール飲料、皆さんご存知の様に大ヒットしている。スーパーマーケット店頭を見ると各社の販売合戦が繰り広げられ、又テレビCMも多量に流れている。ビール風味に続けと今ではカクテル、チューハイ、梅酒、ワイン、最近では焼酎までもゼロの商品が出てきている。ノンアルコール飲料の市場規模も過去3年で3倍に以上に膨らんできている。ここで新たな社会問題が出てきた。一般の会社では、社則によりアルコール飲料の社内への持ち込み、飲酒は禁止されているが、ノンアルコール飲料であれば(コーラ、ジュースの様に)当然禁止されていない。ということはビール風味、焼酎風味であってもノンアルコール飲料であれば問題は無い、と判断するのは合理的すぎるのであろうか。実はこの議論、静かではあるが、各会社で議論になっている。社内でプロジェクトの打ち上げや歓送会を行う時、酒(アルコール飲料)は駄目だが、ノンアルコール飲料ならもちろん良いので、上記の飲料も良い筈であるが、実は不文律で禁止されている会社が多い。でも、どうして?という質問には合理的には答えが無い。社内コミュニケーションの為にはビール風味、ワイン風味の飲料を飲む人、ジュースを飲む人、人それぞれと思うが、如何だろう?
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