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@快進撃続ける日産自動車
日産自動車の調子がいい。数年前には倒産の危機も囁かれ、ルノー自動車と提携した会社とは見違えるようだ。提携、と言っても実態は日産がルノーの支援を得なければ、会社存続も危なかった訳である。そして当時、ルノーから送り込まれたのが、カルロスゴーン社長であった。今では日本企業の役員の中で最高報酬を得る。ゴーン社長が日産で行った改革は色々な本に書かれているので有名だが、その中に私の好きな経営方針がある。それは、“ルノーから送り込まれるメンバーは、宣教師として行くのではない。そこを勘違いするな”、である。何を言っているのか?フランス人の宗教はキリスト教であり、長い西洋の歴史の中でローマを中心とするキリスト教勢力はその教えを全世界に布教してきた。その役割を担ったのが宣教師だが、彼らの仕事は他教の信者にキリスト教がより優れた教えである事を認めさせ、キリスト教徒にする事であった。そしてそれに従わない人たちに対しては、殺戮や圧力を加えた。キリスト教絶対主義である。ゴーン社長はレバノン系であり、所謂フランス人エリートでないし、家庭もエスタブリッシュメントではない。ルノーのフランス人幹部が日産へ乗り込んできて、ルノー経営文化を日産文化の中へ植え込もうとすると、摩擦が起きる。そのとき、ルノー教を布教しようとすると提携が失敗するとゴーン社長は考えた。従って、押し付けられる側の感情とフランス人幹部の布教スタイルを知り抜いていたゴーン社長は、日産へ送り込まれるルノーのフランス人が陥り易い間違った考えを、最初に一括したのである。其の結果、紆余曲折はあったが、日産は見事によみがえり、日産自身の手で利益を出せる態勢になり、昨年ではルノーを支援し始めている。昨年の日産自動車の世界販売台数は466万台、対前年比14%の伸びと好調である。トヨタ、ホンダなどの他の日本勢に比べて元気がよい。今では兄弟会社となったルノーより販売台数では大きくなっている。経営の力を新興国マーケットへ向けており、中国では日本車の中で一番の伸びを示している。一方、台数の伸びが期待できない先進国マーケットでは、競争が激しい事もあり、電気自動車リーブを投入し将来への布石を打つ事を主眼としている。
今後も、今日本の自動車メーカーの中で最も生き生きしている日産自動車の経営から目が離せない。
@鉄の女
今年のアカデミー賞主演女優賞を取ったメリルストリープさんが映画のプロモーションの為に来日した。映画の日本語名は、“マーガレットサッチャー 鉄の女の涙“、である。翻訳者の為に書いておくが、原題は、”The
Iron Lady”。日本語では鉄の女だけでは、何の事か分からない方が多いので、英国の首相であったサッチャーさんの実名を付けた。この映画、英国の政治を描いているのかと思ったが、映画の焦点は妻であり、母であり、一人の女性であったサッチャーさんで、政治家であったのは彼女の人生の一面として捉えている。本物のサッチャーさんと風貌も似ているメリスストリープさんが演じた為、メイクによってまさに本物が映画に登場している様な錯覚を覚える。サッチャー首相が登場したのは、ヨーロッパが政治的にも経済的にも再編を模索している時代で、ヨーロッパと常に距離を置く英国が一人で衰退しかけた時である。
その英国を経済的に立て直し、世界の政治舞台で、ここに英国ありを演出したのがサッチャー首相であった。ロンドンを欧州の金融の中心にする為の思い切った緩和策を行い、一方領土問題ではアルゼンチン沖の英国領フォークランド諸島を守る為に、アルゼンチンと対峙し武力を使う事もためらわなかった。その裏にある、女としての素顔をうまく描いた映画である。一見の価値あり。昨年はジョージ6世を描いた英国王のスピーチが、アカデミー賞作品賞を取ったが、映画の世界では、世界に君臨する大英帝国の栄光が輝いている。
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