@再注目される日本市場
長い間、日本の家電市場は日本メーカーの独壇場であった。日本市場の特殊性として、日本語対応の必要、高コストオペレーション環境での販売、プロモーション、サービスを確立する必要、そして日本家電メーカーのお膝元、という事情がある。アメリカのGE、ワールプール、欧州のエレクトロラックス、ジーメンス、フィリップス、韓国のサムスン、LG、携帯電話のノキア、など世界ではトップのブランドが参入を何度も試みたが、うまくいかなかった。欧米ブランドは日本マーケットにあった商品の開発をしてこなかったし(例えば、アメリカの大きな家用の冷蔵庫を日本の小さな家に売り込むのは無理)、中国・韓国ブランドは日本の消費者の国産信仰思想を崩せなかった。ところが最近になって、その事情が変わろうとしている。特に韓国・中国ブランドの家電商品、そして自動車メーカーが日本市場への再参入を強くしている。1つには、日本の消費者マインドの変化がある。特に韓国製に対しては、悪いデザイン、安かろう悪かろう、であったのが、(サムスンが)世界ブランド、品質もそれほど変わらない、と若者を中心に変化してきている。韓流ブームもその流れを助けている。まず家電では、韓国のサムスンは世界シェア一位を力に薄型テレビのラインアップをそろえてくる。昨年はパナソニック、ソニー、シャープという日本のテレビメーカーがいずれも事業が不振で、テレビビジネスからの撤退、縮小を表明したのと対照的だ。中国のトップブランドのハイアールも白物家電で一気に60種以上のモデルを投入、売り上げでは昨年比5倍を計画している。ハイアールは今年1月に三洋電機の白物家電事業を買収した。巨大な中国家電市場を圧巻しているのがハイアールで、今では世界最大手の白物家電メーカーになっている。自動車では韓国の現代が商用車へ参入予定だ。かつて乗用車市場へ参入を試みた時には失敗をしている。日本の消費者の心理に、高価格品の韓国製はだめ、が存在する為だ。そこで今回の戦略は商用車から参入しようとするものだ。日本の商用車市場は長い間ディーゼル4社(いすず、ふそう、日野、日産ディーゼル)の独占であったが、価格志向の強い市場であるため、低価格を武器にする韓国製トラックが入り込む余地はありそうだ。品質面でも欧米では既に高い評価を受けている分野である。ウォン安も助ける。 沢山の分野で単一マーケットとして世界のトップの規模である日本市場だが、伝統的に日本ブランドが独占してきた家電、自動車分野ではついに穴があく。これも時代の趨勢であろう。
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