@米デルタ航空の垂直統合戦略
航空機で移動する事は当たり前の世の中であるが、この1年を振り返ると、航空券購入時に気をつけてみると、航空会社が設定する航空券価格よりサーチャージ価格の方が高いときもあった。乗客である我々は2つの料金を合わせて普段航空券代としているが、サーチャージ価格は発券タイミングにより価格が上下するので、今月と来月で同じ航空会社、同じ路線、同じ便、同じクラス、同じじきに購入しても、その価格が大きく違う事に驚いた方も多いであろう。航空券価格を左右させるサーチャージ料金は主に航空機燃料の相場価格に連動している。それは、航空会社のリスクヘッジであり、燃料の価格が安かった昔は、そのコンセプトは存在しなかった。燃料価格高騰により航空会社の燃料費用負担が経営を大きく左右する事になった事から生まれた訳だ。私の経験では、石油の市場価格の上下が約2-3ヶ月後に燃料サーチャージの価格に反映されている。現在石油の国際市場での価格は、1バレル約100ドルであり、4月上旬まで100ドルを超えていた時点と比較すると、若干安くなっており、夏場の燃料サーチャージは春に比べて下がるであろう。さて、米3大エアラインの1つであるデルタ航空が新戦略を進めている。それは航空会社自らが石油精製所を所有して、安定した価格での燃料を手に入れる戦略である。デルタが1億5000万ドル(約120億円)で買収するのは、米石油大手コノコフィリップスが米東部ペンシルベニア州に所有するトレイナー製油所。石油精製・販売の「下流」部門を5月1日付で分社化したコノコは、事業再編の一環として同製油所の操業を昨年9月に停止し、売却先を探していた。日量18万5000バレルの精製能力のうち、ジェット燃料は14%を占める。デルタは買収後、1億ドルを投じてジェット燃料の精製能力を日量2万3000バレルから5万2000バレルに増やす計画だ。2011年にデルタが燃料代として支払った金額は117億ドル。営業費用全体に占める燃料費の比率は02年の12%から11年の36%へと10年間で3倍に拡大した。自前の製油所を持つことで、デルタはコスト削減に加え、燃料の安定調達にもつながると期待する。リスクはもちろんある。最大の懸念材料は原料となる原油相場の動向だ。デルタはBPと結んだ向こう3年間の原油調達契約の中身を明らかにしていないが、4年目以降の相場動向次第では想定する燃料費の削減効果を得られない可能性がある。この思い切った戦略が当たるのかどうか、米航空業界の注目を集めている。
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