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ブラジルとメキシコ
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@ブラジルとメキシコ
私は中南米に計7年住んでいた。ラテンを代表するこの2国にも何度も訪問をした事があるが、楽天的なブラジルの国民性と、悲観的なメキシコの国民性が対象をなしていて観察すると面白い。表面的にはラテン気質から、メキシコ人も陽気なメキシカンとアメリカでは言われるが、実態はそうでもない。多くのメキシコ人は自国について悲観しており、世界も彼らの感情を共有してきた。一方、4月上旬のルセフ・ブラジル大統領のワシントン訪問でも見られたブラジルの好況に対する自信は、大衆の想像力をかき立てた。一昔前、中南米地域の真の経済大国はどこかという活発な議論があった。多くのメキシコ人にとって答えは明白だった。メキシコは民主主義への移行を完了し、経済はブラジルより大きかった。メキシコは健全な銀行システムさえ擁していた。一方、ブラジルはやっと通貨危機から立ち直り始めたところで、投資家はブラジルが危険な左翼、ルラ氏を大統領に選ぼうとしていることに大きな不安を抱いていた。ところが、両国の立場はあっという間に逆転した。ブラジルは盛んに取り沙汰される「BRICs」諸国の一員となり、この4カ国の中でも中国に次ぐ2番手につけた。メキシコは取り残され、今やその経済規模は、2兆6000億ドルに上る巨大なブラジル経済の半分だ。一体何が起きたのか?大部分において答えは中国だ。中国が世界貿易機関(WTO)に加盟したことで、メキシコの製造業者は力を失い、コストがはるかに安いライバル企業に仕事を奪われた。もう1つの要因は、メキシコ経済は殆どをアメリカに依存している。そのアメリカ企業が21世紀になって中国により安い労働市場を見つけ、20世紀後半にメキシコとの国境にあるマキラドーラ地帯で大規模な生産をアメリカ向けに行っていた戦略から、中国へシフトをした。対照的に、ブラジルはどんどん力をつけていった。ブラジル経済は、最大の貿易相手国である中国からの飽くなきコモディティー(商品)需要の恩恵を受けた。ルラ氏は、多くの人が恐れたような危険人物では全くなかった。また、ブラジルはメキシコよりもうまく国内市場の寡占問題に対処した。国営石油大手ペトロブラスを自由にし、同社が株式を上場して、莫大な埋蔵石油を探査するため外国企業と組むことを認めた。メキシコの最大の貿易相手国である米国がドットコム危機やサブプライム問題にあえぐ一方で、ブラジルは長い好況を謳歌した。ブラジルは本当に「o
melhor pais do mundo(世界最高の国)」に見えた。世界で最も幸運な国の1つだったのは間違いないだろう。今、その運が変わりつつあるかもしれない。この10年間で初めて、中国ひいてはブラジルに以前ほど強気な見方ができない理由がある。一方、米国ひいてはメキシコを前よりも強気で見ることができる理由もある。中国は賃金と輸送費の上昇により競争力が低下した。北米企業のサプライチェーンは既に短くなっている。米国経済が回復すれば、メキシコの製造業者は利益を得るはずだ。メキシコは世界的な自動車生産国にもなった。自動車業界は昨年、230億ドルの輸出を生み出し、石油産業や観光産業を上回った。これらは安っぽい「マキラドーラ(保税加工区)」の工場ではない。フォルクスワーゲン(VW)や日産自動車が、メキシコの各種貿易協定網を利用して自社の車を全世界に売っている。日本からは遠い国ではあるが、人口でも2-3億人を抱える両大国の存在はアメリカ圏では大きな意味をなしている。
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